成年後見制度と家族信託の違い
認知症対策として知られる成年後見制度と家族信託の違いを徹底比較。費用・手続き・できること・できないこと・向いているケースを具体的に解説します。
✓この記事でわかること
認知症対策として知られる成年後見制度と家族信託の違いを徹底比較。費用・手続き・できること・できないこと・向いているケースを具体的に解説します。
この記事の目次
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「認知症になったら財産はどうなる?」
認知症は年々増加しており、2025年時点で日本の65歳以上の約6人に1人が認知症と推計されています。
「もし親が認知症になったら、預金や不動産はどうなるのか」——この問いへの答えを持っておくことが、今の家族全員にとって必要な知識です。
認知症発症後の財産管理の主な手段として、成年後見制度と家族信託の2つがあります。どちらが向いているかは状況によって異なります。
成年後見制度とは
法定後見
認知症などで判断能力が失われた後に、家庭裁判所に申立てを行い、後見人を選任してもらう制度です。
後見人の種類:
- 後見:判断能力が全くない状態
- 保佐:判断能力が著しく不十分な状態
- 補助:判断能力が不十分な状態(軽度)
後見人は誰がなるのか: 申立てで「長男を後見人にしてほしい」と申請しても、裁判所の判断で弁護士・司法書士等の専門職が選任されることが多い(特に財産が多い場合)。2024年の統計では専門職後見人が約70〜80%を占めています。
任意後見
判断能力があるうちに、自分で後見人と内容を決めて契約しておく制度。判断能力が低下したときに、家庭裁判所への申立てにより効力が発生します。
成年後見制度の問題点
成年後見制度には使いにくい側面もあります。
問題1:財産の積極的活用が難しい
後見人の仕事は「本人の財産を守ること」であり、原則として現状維持・リスク回避が求められます。
- 株式・投資信託の売却・運用は原則できない(元本が保証されない資産の保有は問題視される場合がある)
- 不動産の売却は家庭裁判所の許可が必要(時間がかかる)
- 生前贈与は原則できない
問題2:後見人報酬が継続してかかる
専門職後見人の場合、月2〜6万円程度の報酬が継続してかかります。本人が生きている間ずっと発生するため、10年で240〜720万円のコストになることも。
問題3:一度始めると原則終われない
成年後見は、本人が亡くなるまで原則として続きます。「もう必要ない」とやめることはできません。
家族信託との比較表
| 比較項目 | 成年後見制度(法定後見) | 家族信託 |
|---|---|---|
| 設定タイミング | 判断能力喪失後でも可 | 判断能力がある間のみ |
| 管理者の選定 | 裁判所が選任 | 家族が自由に選べる |
| 不動産売却 | 裁判所許可が必要 | 信託設計次第で柔軟に対応可 |
| 生前贈与 | 原則できない | 信託設計次第で可能 |
| 投資・運用 | 原則できない | 信託設計次第で可能 |
| 継続コスト | 専門職なら月2〜6万円 | 家族受託者なら比較的少額 |
| 初期コスト | 申立費用(数万円) | 設計・契約費用(30〜100万円程度) |
| 柔軟性 | 低い | 高い |
| 相続税対策 | 効果なし | 効果なし |
どちらを選ぶべきか
家族信託が向いているケース
- 判断能力があるうちに準備できる(まだ認知症の診断が出ていない)
- 不動産の管理・売却を柔軟に行いたい
- 障害のある子どもを持ち、長期的な財産管理が必要
- 継続コストを最小化したい
成年後見制度(法定後見)が向いているケース
- すでに認知症が進行しており、家族信託を設定できる状態にない
- 後見人として公正な第三者が必要な状況(家族間でトラブルがある等)
任意後見が向いているケース
- 判断能力はあるが、将来への不安から事前に準備したい
- 後見人を自分で指名しておきたい
- 財産の積極運用よりも生活支援を優先したい
家族信託+任意後見の組み合わせが最強
実務的には、家族信託と任意後見を組み合わせることが最も効果的な場合があります。
- 家族信託:財産管理(不動産売却・預金管理・投資)を家族が担当
- 任意後見:財産管理以外の身上監護(施設契約・医療同意等)を担当
財産管理は家族信託で柔軟に対応し、医療・介護等の契約は任意後見で対応する役割分担が可能です。
📌 成年後見制度と家族信託の詳細は専門書でも学べます
手続きの流れ比較
成年後見申立の流れ
- 申立書類の準備(診断書・戸籍謄本・財産目録等)
- 家庭裁判所への申立
- 裁判所による審判(1〜4ヶ月程度かかることも)
- 後見人選任・就任
家族信託設定の流れ
- 専門家(司法書士等)への相談・設計
- 信託契約書の作成・公正証書化
- 信託口口座の開設
- 不動産があれば信託登記
専門家への相談が不可欠
成年後見制度と家族信託のどちらを選ぶかは、個々の財産状況・家族構成・目的によって異なります。
相談先:
- 司法書士: 家族信託の設計・登記手続き
- 弁護士: 複雑なケース・家族間トラブルがある場合
- 税理士: 相続税・贈与税の観点からのアドバイス
- 法テラス(0570-078374): 費用が心配な方向けの法律相談
💡 財産管理の準備を進めながら、資産の適切な運用も忘れずに
まとめ
- 成年後見制度は認知症発症後でも使えるが、柔軟性が低くコストが継続する
- 家族信託は判断能力があるうちに設定が必要だが、財産活用の自由度が高い
- 任意後見は後見人を自分で指名できる「事前の備え」
- 家族信託+任意後見の組み合わせが理想的なケースも多い
- どちらも相続税対策の効果はなく、別途生前贈与等で対策が必要
早め早めの対策が、家族の将来の選択肢を広げます。
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