個人事業主のスマホ代・通信費の家事按分|説明できる根拠の作り方
スマホ代は何割まで経費にできるのか、根拠をどう示すのか迷う個人事業主の方へ。家事按分の基本ルールと使用時間・日数による按分根拠の作り方、仕訳例まで実務目線で解説します。
✓この記事でわかること
スマホ代は何割まで経費にできるのか、根拠をどう示すのか迷う個人事業主の方へ。家事按分の基本ルールと使用時間・日数による按分根拠の作り方、仕訳例まで実務目線で解説します。
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「スマホ代って、何割まで経費にしていいんだろう?」——個人事業主やフリーランスとして確定申告を経験した方なら、一度は手が止まったことのある問いだと思います。プライベートでも仕事でも同じスマホを使っているのだから、全額経費はさすがに違う気がする。かといって、何%が正解なのか誰も教えてくれない。
結論から言うと、家事按分に「全国共通の正解の割合」はありません。あるのは「事業で使っている割合を、合理的な基準で説明できること」というルールだけです。つまり大事なのは割合の数字そのものではなく、その数字を導いた根拠を自分の言葉と記録で説明できるかどうかなんです。
この記事では、スマホ代・通信費の家事按分について、基本ルール、按分基準の作り方(使用時間・日数・データ通信量など)、具体的な計算例と仕訳、そして根拠資料の残し方までを、実務でそのまま使える形で整理します。読み終わったら、自分の按分割合を15分で決められるようになります。
なお、税制の説明は2026年6月時点の情報に基づきます。具体的な取り扱いの最終確認は国税庁のウェブサイトや税務署・税理士への相談で行ってください。
個人事業主のスマホ代・通信費の家事按分|説明できる根拠の作り方
家事按分とは:プライベートと事業が混ざった支出を分ける考え方
家事按分(かじあんぶん)とは、1つの支出の中に事業用と家事用(プライベート)が混在しているとき、事業に使った割合分だけを必要経費にする処理のことです。スマホ代のほか、自宅兼事務所の家賃・電気代・インターネット回線・車の費用などが代表例です。
経費にできる根拠はシンプルで、所得税法上、必要経費は「事業の遂行上必要な部分」と定められているからです。逆に言うと、プライベート利用分まで経費に入れることはできません。
- 白色申告:家事関連費は「主たる部分が業務の遂行上必要」であることが原則とされますが、業務に必要な部分を明らかに区分できる場合はその部分を経費にできます
- 青色申告:取引記録などに基づいて業務に必要な部分を合理的に区分できれば、その割合が50%以下でも経費算入が認められやすい運用です
どちらの場合も共通するキーワードは「明らかに区分できる」。つまり記録と根拠です。青色申告をまだ選択していない方は、按分の自由度の面でも65万円控除の面でも青色が有利な傾向があるので、青色申告承認申請書の書き方と提出期限を確認しておくことをおすすめします。
スマホ代のうち按分対象になる費用・ならない費用
ひとくちに「スマホ代」と言っても、中身は複数の費用の集合体です。按分の前に分解しましょう。
| 費用の種類 | 経費化の考え方 | 勘定科目の例 |
|---|---|---|
| 月額通信料(基本料・データ通信料) | 事業使用割合で按分 | 通信費 |
| 通話料(従量分) | 明細で事業通話を特定できれば実額、難しければ按分 | 通信費 |
| 端末代金(10万円未満) | 事業使用割合で按分して消耗品費等で処理 | 消耗品費 |
| 端末代金(10万円以上) | 原則、資産計上して減価償却(按分も併用) | 工具器具備品/減価償却費 |
| アプリ・クラウドの月額課金 | 事業専用なら全額、混在なら按分 | 通信費・支払手数料など |
| 修理代・アクセサリ | 事業使用割合で按分 | 修繕費・消耗品費 |
| 自宅の固定回線(Wi-Fi) | 事業使用割合で按分 | 通信費 |
一番ラクで強力な方法は、仕事用とプライベート用で回線や端末を分けてしまうことです。仕事専用スマホなら按分不要で原則全額経費にでき、説明もシンプルになります。デュアルSIM対応スマホで「仕事用SIM+私用SIM」を1台に入れる方法でも、番号単位で費用を分けられます。
そこまでしない場合に登場するのが、次の按分基準づくりです。
按分基準の作り方:使える「ものさし」は4つ
按分割合は、税務署に聞かれたときに「こういう計算です」と筋道立てて答えられる基準(ものさし)から導きます。スマホ・通信費でよく使われるのは次の4つです。
基準1:使用時間ベース 1日のスマホ利用のうち、仕事利用が何時間かで按分します。スマホのスクリーンタイム機能(アプリ別利用時間レポート)が客観的な裏付けになります。 例:1日のスマホ利用5時間のうち仕事関連3時間 → 3÷5=60%
基準2:日数・曜日ベース 営業日だけ仕事利用が中心になる働き方なら、稼働日数で按分します。 例:週5日稼働 → 5÷7=約70%。「平日は主に仕事・休日は私用」という説明と組み合わせると分かりやすくなります。
基準3:データ通信量ベース 通信会社のマイページやスマホの設定画面で、アプリ別のデータ使用量を確認できます。仕事アプリ(メール、クラウド、Web会議など)の通信量比率で按分する方法です。
基準4:通話明細ベース(通話料) 通話明細から事業用の通話を特定し、実額または比率で計上します。固定的な月額プランの場合は基準1〜3と組み合わせます。
どの基準を選んでもかまいませんが、コツは2つあります。
- 自分の働き方を最も素直に表す基準を選ぶ(在宅ワーク中心なら時間ベース、外回り中心なら日数ベースなど)
- 一度決めた基準は継続して使う(毎年都合よく基準を変えると、説明の信頼性が下がります)
やってみると分かるのですが、スクリーンタイムを1〜2週間分スクリーンショットで残すだけで、「なんとなく50%」が「記録に基づく60%」に変わります。この差が、説明できる経費とできない経費の分かれ目です。
具体例で計算してみる:月1万円のスマホ代ならいくら経費になるか
モデルケースで通しで計算してみましょう。
前提:
- Webデザイナー(個人事業主・青色申告)
- スマホ代:月9,800円(通信料・通話込み)
- 自宅Wi-Fi:月5,500円
- スクリーンタイム実測:スマホ利用のうち仕事関連が約60%
- 自宅作業は週5日、Wi-Fiの仕事利用を50%と設定
年間の経費計上額の目安:
| 項目 | 年間支払額 | 按分割合 | 経費計上額(目安) |
|---|---|---|---|
| スマホ代 | 117,600円 | 60% | 70,560円 |
| 自宅Wi-Fi | 66,000円 | 50% | 33,000円 |
| 合計 | 183,600円 | — | 103,560円 |
仮に所得税率10%+住民税10%の方なら、約10.3万円の経費計上で年2万円程度の税負担が軽くなる計算です(社会保険・国民健康保険への影響は別途。あくまで目安です)。
仕訳例(スマホ代を個人の口座から払っている場合):
毎月の支払時に全額を経費計上せず、決算時にまとめて按分する方法が実務ではよく使われます。
- 支払時:通信費 9,800円 / 事業主借 9,800円
- 決算時(家事分40%を除外):事業主貸 47,040円 / 通信費 47,040円
会計ソフトを使っていれば、家事按分の割合を登録するだけで決算時の振替を自動計算してくれるものが多く、手計算はほぼ不要です。ソフト選びに迷ったら確定申告ソフト比較2026:freee・マネーフォワード・やよいを参考にしてください。
「説明できる根拠」の残し方:税務調査で困らない3点セット
按分で本当に大事なのは、割合を決めた後の証拠の残し方です。次の3点セットをそろえておけば、聞かれたときに落ち着いて説明できます。
1. 根拠メモ(按分の計算書) A4一枚で十分です。「スクリーンタイム実測(◯月◯日〜◯日)に基づき、仕事利用60%と算定。スマホ代の60%を通信費として計上する」のように、基準・測定期間・結論を書いて保存します。作成日付も入れておきましょう。
2. 客観データ スクリーンタイムのスクリーンショット、通信会社の利用明細、業務カレンダー(稼働日の記録)など、根拠メモを裏付けるデータです。年に1〜2回、定点観測的に取得しておくと「継続的に測っている」ことを示せます。
3. 支払記録 請求書・引き落とし明細・領収書。事業用クレジットカードや事業用口座で払っていれば、抽出も楽になります。口座やカードを分ける方法はフリーランスの事業用銀行口座の作り方|おすすめ口座と開設手順で詳しく解説しています。
避けたいのは「100%経費計上なのに私用の形跡が明らか」「根拠を聞かれて答えられない」という状態です。割合が多少高めでも、測定に基づく説明が一貫していれば議論の土台に乗ります。逆に根拠ゼロの数字は、たとえ控えめな割合でも弱いのです。
帳簿や請求書等の保存期間は原則7年(書類によっては5年)とされています。根拠メモも帳簿類と一緒に保存しておきましょう。詳細は国税庁のウェブサイトの記帳・帳簿等の保存に関するページで確認できます。
よくある質問:境界線のケースをどう考えるか
Q1. プライベート兼用だけど、按分割合90%はあり? A. 働き方の実態次第です。たとえば配達ドライバーやSNS運用代行のように「起きている時間の大半がスマホ業務」という実態と記録があれば高割合もあり得ます。実態より高く見せようとするのではなく、実測して出てきた数字を使いましょう。
Q2. 副業の会社員でも家事按分できる? A. 副業所得(雑所得・事業所得)の必要経費として、事業(業務)利用分の按分計上は可能です。ただし副業の場合は利用実態として割合が小さくなることが多いため、より丁寧に記録を残すことをおすすめします。
Q3. 家族のスマホ代も経費にできる? A. 家族が事業を手伝っていて業務に使っている実態があれば、その業務利用分は検討の余地がありますが、単に家族の私用スマホは経費になりません。生計を一にする家族への給与等は青色事業専従者給与など別の論点になるため、慎重に確認してください。
Q4. 按分割合は毎月変えてもいい? A. 制度上の禁止はありませんが、実務上は年単位で一定の割合を使い、働き方が大きく変わったときに見直すのが管理しやすく、説明もしやすい方法です。
Q5. 通信費以外の家事按分(家賃・電気代)も同じ考え方? A. 基本は同じで、「合理的な基準(面積・時間など)+記録」です。家賃は事業使用スペースの床面積比、電気代は使用時間とコンセント数などが代表的な基準です。スマホ代で按分の型を一度作れば、他の費目にもそのまま応用できます。
まとめ:割合の正解探しをやめて、根拠づくりに15分使う
要点を整理します。
- 家事按分に全国共通の「正しい割合」はない。あるのは「合理的な基準で区分し、説明できる」というルール
- スマホ・通信費の按分基準は使用時間・日数・データ通信量・通話明細の4つが軸
- 月9,800円のスマホ代を60%按分すれば年約7万円の経費になる計算(目安)
- 残すべきは「根拠メモ+客観データ+支払記録」の3点セット
- 迷うなら仕事用回線を分離するのが最強。按分そのものが不要になる
税務の取り扱いは2026年6月時点の情報に基づいています。個別の判断に迷う場合は、国税庁のウェブサイトで一次情報を確認するか、税務署・税理士に相談してください。
今日やる最初の一歩はこれだけ:スマホのスクリーンタイム(アプリ別利用時間)を開いて、直近1週間の画面をスクリーンショットで保存しましょう。それがあなたの按分割合の、最初の客観的な根拠になります。
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