年金の繰り下げ受給は得か:75歳まで待つと月額84%増の計算
年金の繰り下げ受給の仕組みと損益分岐点を解説。65歳から70歳、75歳まで受給を遅らせることで月額がどれだけ増えるか、損か得かを具体的な計算で検証します。
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年金の繰り下げ受給の仕組みと損益分岐点を解説。65歳から70歳、75歳まで受給を遅らせることで月額がどれだけ増えるか、損か得かを具体的な計算で検証します。
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2026年6月19日 制度改正確認済み
年金・医療・介護制度:年金額、在職老齢年金の基準額、高額療養費、介護保険料・自己負担は年度や所得区分で変わります。本文の金額は記載年の目安として読み、実際の受給・負担額は日本年金機構、厚生労働省、加入先へ確認してください。 公式情報を確認
年金は65歳から受け取るのが基本ですが、受給開始を遅らせる「繰り下げ受給」を選ぶと、月額を増やすことができます。2022年4月の法改正により、最大75歳まで繰り下げが可能になり、75歳受給開始なら月額が84%も増加します。
「待てば待つほど得」のように見えますが、本当にそうなのでしょうか。この記事では、繰り下げ受給の仕組みと損益分岐点、どんな人に向いているかを具体的な計算で解説します。
繰り下げ受給の仕組み:1ヶ月遅らせるごとに0.7%増加
年金の繰り下げ受給は、受給開始を1ヶ月遅らせるごとに月額が0.7%増加する制度です。
| 受給開始年齢 | 増加率 |
|---|---|
| 65歳(基準) | 0% |
| 66歳 | +8.4%(12ヶ月×0.7%) |
| 67歳 | +16.8% |
| 68歳 | +25.2% |
| 69歳 | +33.6% |
| 70歳 | +42.0% |
| 71歳 | +50.4% |
| 72歳 | +58.8% |
| 73歳 | +67.2% |
| 74歳 | +75.6% |
| 75歳 | +84.0%(120ヶ月×0.7%) |
老齢基礎年金と老齢厚生年金を個別に繰り下げできます(両方一緒でなくてもOK)。
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損益分岐点の計算:何歳まで生きれば得になるか
繰り下げ受給の「損益分岐点」を計算してみましょう。
前提:65歳からの年金月額が15万円の場合
70歳まで繰り下げた場合
- 70歳からの月額:15万円 × 1.42 = 21.3万円(月6.3万円増)
- 65〜70歳の5年間で受け取れなかった総額:15万円 × 60ヶ月 = 900万円
- 損益分岐点:900万円 ÷ 6.3万円 = 約143ヶ月(約12年)
- 80歳前後で損益分岐点を超える
75歳まで繰り下げた場合
- 75歳からの月額:15万円 × 1.84 = 27.6万円(月12.6万円増)
- 65〜75歳の10年間で受け取れなかった総額:15万円 × 120ヶ月 = 1,800万円
- 損益分岐点:1,800万円 ÷ 12.6万円 = 約143ヶ月(約12年)
- 87歳前後で損益分岐点を超える
どちらも「約12年後に損益分岐点を超える」という点は同じです。男性の平均寿命が81歳、女性が87歳であることを考えると、75歳繰り下げは「平均寿命ギリギリ」で損益分岐点を超える計算になります。
税金・社会保険料を考慮すると実際の効果は下がる
繰り下げで年金額が増えると、税金と社会保険料の負担も増えます。これを考慮しないと実際の手取り増加額を過大評価してしまいます。
これらを考慮すると、手取りの増加率は計算上の増加率(0.7%/月)より低くなります。専門家の試算では、実質的な手取り増加は公表値の70〜80%程度と考えるのが現実的です。
繰り下げが向いている人・向いていない人
繰り下げ受給が向いている人
- 健康で長生きが期待できる人(家族に長寿者が多い)
- 65〜75歳の生活費を賄える十分な資産・収入がある人
- 配偶者が自分より年下で、遺族年金を増やしたい人
- 税率が低い人(所得が少なく、年金増額の税負担が小さい)
繰り下げが向いていない人
- 健康状態に不安がある人
- 65〜75歳の生活費が不足している人
- 繰り下げ期間中に貯蓄を取り崩すと損になる可能性がある人
- 高額所得者(年金増額分への税率が高い)
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繰り下げ受給の活用法:部分的な繰り下げも可能
実は、老齢基礎年金と老齢厚生年金を別々に繰り下げることができます。例えば、「老齢基礎年金は65歳から受給し、老齢厚生年金は70歳まで繰り下げる」という選択が可能です。
これにより、65歳から一定の収入を確保しつつ、老齢厚生年金の繰り下げで将来の月額を増やすという柔軟な戦略が取れます。
また、2023年4月から「繰り下げみなし増額制度」が導入され、70歳以降に過去にさかのぼって一括受給する選択肢も増えました(その分繰り下げ期間は短くなります)。
在職中の繰り下げ注意点:在職老齢年金との兼ね合い
65歳以降も会社員として働きながら年金を繰り下げる場合、注意が必要です。
65歳以降に厚生年金に加入しながら働いている場合、一定以上の収入があると「在職老齢年金制度」により年金が減額されることがあります(月収+年金の合計が50万円を超えると年金が削られる)。
この場合、繰り下げを選んでも年金額が増えないケースがあります。在職中の繰り下げを検討する際は、この点を必ず確認しましょう。
繰り下げ中に亡くなった場合:遺族は救済される
「繰り下げている途中で亡くなったら損では?」と心配する方も多いでしょう。
2023年4月の法改正で、繰り下げを選んでいた人が亡くなった場合、遺族は「65歳時点の月額×受給しなかった月数=未払い一時金」として受け取れる制度が整備されています。
また、配偶者への遺族厚生年金は、被保険者の老齢厚生年金の4分の3が支給されます(繰り下げによる増額分は遺族厚生年金に反映されない点に注意)。
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まとめ:繰り下げは「長生きへの保険」と考える
年金の繰り下げ受給は、長生きするほど得になる「長寿リスクへの保険」として考えるのが合理的です。
- 70歳繰り下げ:80歳で損益分岐点(平均寿命前後)
- 75歳繰り下げ:87歳で損益分岐点(女性の平均寿命付近)
結論として、健康状態が良く、繰り下げ期間の生活費を賄える資産がある方には、繰り下げ受給は有効な選択肢です。逆に、健康不安がある方や生活費が厳しい方は、65歳から受給する方が安心です。
どちらが正解かは、あなたの健康状態・資産状況・価値観によって異なります。ねんきんネットで試算してから、最適な受給戦略を選びましょう。
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