単価交渉は実績の棚卸しから|継続案件で値上げを切り出すタイミングと伝え方
継続案件の値上げ交渉が言い出せない人へ。実績の棚卸しシートの作り方から、切り出すタイミング・そのまま使える文面・断られた後の動き方まで、手順をまるごと解説します。
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継続案件の値上げ交渉が言い出せない人へ。実績の棚卸しシートの作り方から、切り出すタイミング・そのまま使える文面・断られた後の動き方まで、手順をまるごと解説します。
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単価交渉は実績の棚卸しから|継続案件で値上げを切り出すタイミングと伝え方
「もう1年以上同じ単価で受けているけれど、値上げの話を切り出せない」。継続案件を持つフリーランスの方から、いちばんよく聞く悩みがこれです。新規案件なら最初に金額を提示すればいいだけですが、継続案件の値上げは「関係が壊れたらどうしよう」という不安がつきまといます。
ただ、やってみると分かるのですが、単価交渉で失敗する原因の多くは「交渉の仕方」ではなく「交渉の前の準備不足」です。自分が相手にどれだけの価値を出してきたかを数字で示せないまま、「物価も上がっていますし……」と切り出してしまうから、相手も判断材料がなくて困ってしまうのです。
この記事では、交渉の前に必ずやっておきたい「実績の棚卸し」の具体的な手順から、値上げを切り出すベストタイミング、金額の決め方、そのまま使える文面、断られたときの撤退ラインまで、継続案件の単価交渉を一連の流れとして解説します。読み終わる頃には、「何を準備して、いつ、どう言えばいいか」が具体的にイメージできる状態になっているはずです。
単価交渉が「気まずい」のは準備不足が原因
単価交渉に苦手意識を持つ人は多いですが、その正体を分解すると、だいたい次の3つに行き着きます。
1つ目は「自分の価値を客観的に説明できない」こと。感覚的には貢献している自信があっても、それを数字や事実で示せないと、交渉の場で言葉に詰まります。2つ目は「断られたら関係が終わる」という思い込み。実際には、根拠のある値上げ打診で即座に契約を切られるケースはまれで、多くは「社内で検討します」「次の更新時に」といった保留から始まります。3つ目は「相場を知らない」こと。自分の単価が市場でどの位置にあるか分からないと、強気に出るべきか現状維持が妥当かの判断ができません。
逆に言えば、この3つを事前に潰しておけば、交渉は「お願い」ではなく「条件のすり合わせ」になります。値上げ交渉とは、相手に value を再認識してもらい、取引条件を現状に合わせて更新する事務手続きに近いものです。気合いや度胸の問題にしないことが、最初の一歩です。
なお、交渉力の土台になるのは「他にも仕事の選択肢がある」状態です。1社依存だとどうしても弱気になります。並行して新しい取引先を増やす動き方はフリーランスの営業・クライアント獲得:仕事を安定的に取り続ける方法で詳しく解説しているので、あわせて読んでみてください。
交渉前に必ずやる「実績の棚卸し」3ステップ
単価交渉の成否は、交渉のテーブルに着く前にほぼ決まっています。やることはシンプルで、「自分がこの取引先に何を提供してきたか」を事実ベースで一覧にすることです。
ステップ1:作業実績を数字で洗い出す
まず、過去6〜12ヶ月の納品物・対応内容をすべて書き出します。記憶に頼らず、請求書・納品メール・チャットログをさかのぼるのがコツです。実際に手を動かすと、「こんなこともやっていたのか」と自分でも忘れていた対応が必ず出てきます。
| 棚卸し項目 | 記録する内容の例 |
|---|---|
| 納品量 | 記事48本・バナー120点・月次レポート12回 など |
| 品質指標 | 修正依頼率5%以下、納期遅延ゼロ、検収一発通過率 など |
| 成果への貢献 | 担当ページのアクセス増、CVR改善、問い合わせ件数の変化 など |
| 契約外の対応 | 急ぎ対応の回数、仕様変更への無償対応、改善提案の採用数 など |
| 業務の拡張 | 当初契約になかった業務(構成案作成、ディレクション補助 など) |
特に効くのは「契約外の対応」と「業務の拡張」です。開始時の契約内容と現在の実作業を見比べると、業務範囲が静かに広がっているケースが非常に多く、これは値上げのもっとも正当な根拠になります。
ステップ2:相手にとっての「置き換えコスト」を見積もる
次に、相手の視点に立って「自分との取引をやめた場合のコスト」を考えます。新しい外注先を探す手間、業務知識の引き継ぎ、品質が安定するまでの期間。継続して1年も経っていれば、あなたは「説明しなくても伝わる外注先」になっており、これは新規の発注先にはない価値です。この視点を持つと、「値上げをお願いする」ではなく「条件を見直しても継続する価値がある」という構図で話せるようになります。
ステップ3:市場相場と自分の単価を並べる
最後に、同職種・同レベルの市場相場を調べ、自分の現単価との差を確認します。クラウドソーシングの公開案件、エージェントの公開単価レンジ、同業者の発信などが参考になります。相場より明らかに低ければ「相場との乖離」が根拠に加わりますし、相場並みなら「業務範囲の拡大」を主軸に据える、という戦略判断ができます。
値上げを切り出すベストタイミング5つ
同じ内容の交渉でも、切り出すタイミングで通りやすさは大きく変わります。狙い目は次の5つです。
1. 契約更新・期の変わり目の1〜2ヶ月前。 相手が予算を組み直すタイミングです。更新直前だと予算が確定済みで動かせないことがあるため、少し早めに打診するのがポイントです。多くの会社は決算期前後に翌期予算を固めるので、取引先の決算月を把握しておくと有利です。
2. 大きな成果が出た直後。 担当した施策の数字が伸びた、納品物が社内で高評価だった、といった「価値が見えている瞬間」は最良のタイミングです。成果報告と条件見直しの打診をセットで行うと自然です。
3. 業務範囲の拡大を打診されたとき。 「これもお願いできますか」と言われた瞬間は、もっとも自然に条件の話を出せる場面です。「お受けできます。業務範囲が変わるので、料金体系もあわせて見直させてください」と返せば、値上げではなく見積もりの話として進められます。
4. 取引開始から1年などの節目。 「お取引開始から1年になりますので、来期に向けて条件のご相談をさせてください」という切り出しは、相手にとっても受け止めやすい定型です。
5. 自分の稼働が埋まってきたとき。 他案件で稼働が埋まりつつある状態は、交渉が決裂しても致命傷にならない、心理的に対等に話せる状態です。逆に、収入の大半を1社に依存している状態での強気な交渉は避けたほうが無難です。
避けるべきタイミングもあります。相手の繁忙期のピーク、自分がミスをした直後、相手の業績が明らかに悪化している局面では、内容以前に心証で損をする傾向があります。
金額の決め方:いくら上げるかの目安と根拠
「上げたい気持ちはあるが、いくらと言えばいいか分からない」という人のために、目安を整理します。前提として、根拠の強さと値上げ幅は比例させるのが基本です。
| 状況 | 値上げ幅の目安 | 主な根拠の立て方 |
|---|---|---|
| 業務内容は同じ・継続1年以上 | 5〜10% | 習熟による品質・速度向上、物価動向 |
| 契約外の対応が常態化している | 10〜20% | 実作業と契約内容の乖離を一覧で提示 |
| 業務範囲が明確に拡大した | 20〜30%+新業務分 | 新旧の業務範囲を並べて再見積もり |
| 相場より明らかに低単価 | 相場の下限まで | 市場相場の客観データを提示 |
| 成果に直接貢献した実績がある | 10〜25% | 成果数字と自分の関与を具体的に説明 |
※あくまで一般的な目安です。業界・職種によって幅があるので、最終的には自分の市場相場を確認した上で決めてください。
実務上のコツを2つ。1つ目は、希望額は「通したい額より少し上」を提示することです。例えば15%上げたいなら20%で打診し、調整の余地を残します。2つ目は、金額の交渉が難航したときのために「金額以外の改善条件」を用意しておくことです。支払いサイトの短縮、最低発注量の保証、納期の余裕、前払いなど、単価以外にも交渉できる条件は意外と多くあります。やってみると分かるのですが、「単価は据え置きで月の発注本数を保証してもらう」だけでも、収入の安定度はかなり変わります。
伝え方:そのまま使える文面と話し方の型
準備ができたら、いよいよ伝え方です。基本の型は「感謝 → 実績 → 提案 → 相手の都合への配慮」の4部構成です。メールやチャットで使える文面例を載せておきます。
いつもお世話になっております。◯◯です。 △△様とのお取引も2年目に入り、当初よりも幅広い業務をお任せいただけるようになり、大変ありがたく思っております。 つきましては、現在の業務内容を踏まえ、次回更新のタイミングで単価のご相談をさせていただけないでしょうか。 この1年の対応実績を別紙にまとめました。当初のご契約時と比べ、◯◯と◯◯の業務が加わっており、現在の単価◯◯円を◯◯円に見直していただきたいと考えております。 ご予算の都合もあるかと思いますので、条件面はご相談しながら決めさせていただければ幸いです。ご検討のほど、よろしくお願いいたします。
ポイントは3つあります。第一に、棚卸しした実績を「別紙」や箇条書きで添えること。口頭や本文で長々と説明するより、一覧で見せたほうが説得力が出ます。第二に、希望額を具体的な数字で示すこと。「少し上げていただけませんか」という曖昧な打診は、相手に丸投げすることになり、かえって答えにくくなります。第三に、「ご相談しながら」と調整の余地を明示すること。一方的な通告と受け取られるのを防げます。
口頭で伝える場合は、定例ミーティングの最後に「もう1点、ご相談がありまして」と切り出し、その場で結論を求めず「資料をお送りするので、ご検討ください」と引くのがスムーズです。相手も社内調整が必要なので、即答を迫らないほうが結果的に通りやすい傾向があります。
断られたときの対応と撤退ライン
値上げ打診への返答は、おおむね「承諾」「条件付き承諾」「保留」「拒否」の4パターンです。それぞれの動き方を決めておくと、感情的にならずに済みます。
条件付き承諾(例:5%なら可能)の場合は、金額以外の条件を組み合わせて落とし所を探ります。「では単価は5%増でお受けし、あわせて月の最低発注本数を◯本でお約束いただけますか」のような形です。
保留(社内で検討します)の場合は、回答期限を自分から区切ります。「来月の更新までにお返事いただけますと幸いです」と添えるだけで、塩漬けを防げます。
拒否の場合が、いちばん事前の覚悟が要るところです。おすすめは、交渉前に「この条件を下回り続けるなら、◯ヶ月以内に案件の比重を移す」という撤退ラインを自分の中で決めておくことです。即座に契約を切る必要はありません。受注は続けながら新規開拓を進め、より良い条件の案件が取れた時点で稼働の配分を変えていく。これが現実的な動き方です。
そして長期的には、交渉に強くなるいちばんの方法は「実績を外に見せる仕組み」を持つことです。ポートフォリオサイトや発信があると、新規の引き合いが入り、既存クライアントとの交渉でも「他からも声がかかっている人」として扱われます。守りの交渉術より、選ばれる状態づくりのほうが効きます。
単価が上がったら税金と口座管理も見直す
交渉が実って収入が増えたら、お金まわりの管理も一段階アップデートしておきましょう。
まず税金です。2026年6月時点の制度では、個人事業主の所得税は所得が増えるほど税率が上がる累進課税で、課税所得が195万円を超えると税率が10%、330万円を超えると20%に上がります(別途控除あり)。単価アップで年収が一段上がる年は、納税資金を売上の2〜3割を目安に別枠で確保しておくと、確定申告の時期に慌てずに済みます。申告手続きや必要書類の詳細は、国税庁の確定申告ページで最新情報を確認してください。
また、まだ白色申告のままの人は、青色申告への切り替えを検討する価値があります。最大65万円の控除は、収入が増えるほど節税効果が大きくなります。要件は青色申告で65万円控除を受けるための条件にまとめています。あわせて、売上の入金口座と生活費の口座を分けておくと、棚卸しにも確定申告にも効きます。口座の分け方はフリーランスの事業用銀行口座の作り方|おすすめ口座と開設手順が参考になります。
まとめ:交渉は「準備9割」。今日やるのは棚卸しの1行目だけ
単価交渉のポイントをおさらいします。
- 交渉が怖いのは準備不足が原因。実績を数字で示せれば「お願い」が「条件のすり合わせ」に変わる
- 交渉前に実績の棚卸しを3ステップで:作業実績の数値化 → 置き換えコストの見積もり → 相場との比較
- 切り出すタイミングは「更新の1〜2ヶ月前」「成果直後」「業務拡大の打診時」が狙い目
- 値上げ幅は根拠の強さに比例させる。業務範囲が広がっているなら20〜30%も十分に正当
- 文面は「感謝 → 実績 → 具体的な提案 → 配慮」の4部構成。希望額は必ず数字で示す
- 断られた場合の撤退ラインを事前に決め、収入源の分散を並行して進める
今日やる最初の一歩は、請求書フォルダを開いて、直近6ヶ月にやった仕事を1行ずつ書き出し始めることです。棚卸しシートが埋まっていくと、「自分はこれだけやってきたのか」という事実が、交渉を切り出す勇気そのものになってくれます。
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暮らしとお金のカフェ 編集部
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