国民年金の追納と繰下げ受給の判断
国民年金は追納・繰上げ・繰下げの選択で受給額が変わります。それぞれのメリットとデメリットを整理し、自分に合う選択を考える判断軸を紹介します。
✓この記事でわかること
国民年金は追納・繰上げ・繰下げの選択で受給額が変わります。それぞれのメリットとデメリットを整理し、自分に合う選択を考える判断軸を紹介します。
こんにちは、暮らしとお金のカフェへようこそ。お金の基礎知識を、難しい言葉なしでやさしく解説します。
「年金って、いつからもらうのが一番得なの?」——老後のお金の話を考え始めると、必ず出てくるのが年金の受給タイミングの問題です。国民年金は65歳からもらうのが基本ですが、実は60歳から繰り上げてもらうことも、逆に75歳まで繰り下げてもらうことも選択できます。また、若い頃に免除していた分を後から追納する選択肢もあります。今日は「自分にとってどの選択が得か」を判断するための基準を、わかりやすく解説します。
国民年金の基本を再確認
国民年金(基礎年金)は20歳から60歳までの40年間(480ヶ月)保険料を満額納付した場合、65歳から年間約80万円(月約6.7万円)受け取れます(2026年現在の目安)。
40年全期間納付した場合を「満額」とすると、未納・免除期間があると比例してもらえる金額が減ります。
学生時代の追納で年金額アップ
学生納付特例で猶予していた保険料は、10年以内なら追納可能。月約1万7千円×24か月で約40万円の追納で、年金が年5万円程度増える試算。長生きするほど元が取れる仕組みなので、健康に自信がある人ほど追納価値が高いです。
追納のシミュレーション
学生時代の2年間(24か月)分の保険料を追納した場合の計算例:
追納費用(目安)
- 保険料:月約17,510円(2026年度)×24か月 ≒ 約42万円 (追納時に加算があるため実際はやや高め)
受給額の増加
- 年金額増分:年間約5万円程度
- 月換算:約4,200円増
元が取れる年数の計算 42万円 ÷ 5万円/年 = 約8年
65歳から受給して8年後(73歳以上)まで生きれば元が取れる計算です。平均寿命(男性81歳・女性87歳)を考えると、多くの人にとって元が取れる選択です。
追納のデメリットも確認する
- 一度に数十万円の費用が必要
- 追納した分の社会保険料控除(所得控除)は発生するが、元本回収まで時間がかかる
- 追納よりも運用(投資)に回した方が有利な場合もある
「今の手元資金の状況」と「長生きするリスクへの備え」のバランスで判断することが重要です。
繰下げ受給で年金1.84倍
65歳の通常受給を75歳まで繰下げると、年金が1.84倍に増えます。70歳でも1.42倍。一生続く加算なので、長寿家系の人や働き続けられる人には魅力的な選択肢。健康・資産・働き方を総合的に判断します。
繰下げ受給の倍率一覧
| 受給開始年齢 | 増額率 | 倍率 |
|---|---|---|
| 65歳(通常) | ±0% | 1.00倍 |
| 66歳 | +8.4% | 1.084倍 |
| 67歳 | +16.8% | 1.168倍 |
| 68歳 | +25.2% | 1.252倍 |
| 69歳 | +33.6% | 1.336倍 |
| 70歳 | +42.0% | 1.420倍 |
| 71歳 | +50.4% | 1.504倍 |
| 72歳 | +58.8% | 1.588倍 |
| 73歳 | +67.2% | 1.672倍 |
| 74歳 | +75.6% | 1.756倍 |
| 75歳 | +84.0% | 1.840倍 |
1ヶ月繰り下げるごとに0.7%増額されます。
繰下げ受給が有利なケース
- 65〜70歳の間も働いて十分な収入がある
- 健康状態が良く、長生きの見込みがある
- 長寿家系(親・祖父母が長命)
- 65歳時点で資産や他の収入があり、年金に頼らなくてよい
損益分岐点の計算 70歳まで繰り下げた場合(42%増)の損益分岐点: 「繰り下げの機会コスト(65〜70歳にもらえなかった額)÷ 月の増額分」 65歳月6.7万円 × 60か月(5年分)= 402万円の機会コスト 増額分:月2.8万円(6.7万円×42%) 402万円 ÷ 2.8万円/月 ÷ 12 ≈ 約12年
つまり、70歳から受給開始して12年後(82歳以降)から「繰り下げた方が得」になります。平均寿命を超えるくらいまで長生きすれば得、早めに亡くなると損、というシンプルな計算です。
繰下げ受給の注意点
- 繰下げ中に死亡した場合、増額分の恩恵をほとんど受けられない
- 医療費が増えた・介護が必要になった時期と重なる可能性
- 繰下げ前に「ねんきん定期便」で自分の受給見込み額を確認すること
繰上げ受給は慎重に
65歳前から受給する繰上げは、最大24%減額されます。一度繰上げると一生減額されるため、慎重な判断が必要。早く欲しいから繰上げる、ではなく長期の損益で判断するのが基本です。
繰上げ受給の減額率
| 受給開始年齢 | 減額率 | 受け取れる割合 |
|---|---|---|
| 60歳 | −24% | 76% |
| 61歳 | −19.2% | 80.8% |
| 62歳 | −14.4% | 85.6% |
| 63歳 | −9.6% | 90.4% |
| 64歳 | −4.8% | 95.2% |
| 65歳 | ±0% | 100% |
(2022年以降の新制度。1ヶ月ごとに0.4%減額)
繰上げ受給が問題になるケース
- 一生涯、減額された年金を受け取り続ける:60歳で繰り上げると、例え90歳まで生きても76%の年金しかもらえない
- 寡婦年金・障害基礎年金への影響:繰上げ後は受け取れない給付金がある
- 加給年金が受け取れなくなる場合がある
繰上げ受給を選ぶのが合理的なケース:
- 深刻な病気で寿命が短いと予想される
- 60〜65歳の生活費が本当に足りなく、他の選択肢がない
- 資産形成が十分できている上での選択
「年金は早めにもらった方が安心」という感覚で安易に繰り上げるのは危険です。
自分に合う選択を判断する3つの軸
軸1:健康状態・寿命の予測
- 健康で長命が期待できる → 繰下げが有利
- 持病があり寿命が短い可能性 → 早めの受給か繰上げを検討
軸2:65歳以降の就労可能性
- 70歳まで働ける見込みがある → 繰下げしやすい
- 65歳以降は働けない・働かない予定 → 65歳での通常受給か繰下げ初期段階
軸3:65歳時点の資産と収入源
- 十分な金融資産・他の収入がある → 繰下げの選択肢が広がる
- 65歳時点で資産不足 → 通常受給か追納による増額で補う
ねんきん定期便で現状確認
毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」で、現在の年金受給見込み額を確認しましょう。
- 50歳未満:これまでの加入実績を基にした仮定の受給額
- 50歳以上:現在の加入状況が続いた場合の見込み受給額
ねんきんネット(www.nenkin.go.jp)にアカウント登録すると、いつでもオンラインで確認できます。
まとめ
国民年金の追納・繰下げ・繰上げの選択は、「長生きリスクへの備え」と「手元資金の確保」のバランスで考えることが基本です。
- 追納:学生時代の未納分は、手元に余裕があれば早めに追納する価値あり
- 繰下げ:健康で70歳以降も長生きが期待できるなら、最大75歳まで繰下げで大幅増額
- 繰上げ:一生涯の減額を理解した上で、本当に必要な場合のみ選択
「ねんきん定期便」で現状を確認し、FPや年金事務所への相談も活用しながら、自分の状況に合った判断をしましょう。
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