フリーランス業務委託契約書の作り方:テンプレートと必須記載事項を解説
フリーランスの業務委託契約書の作り方と必須記載事項を解説。契約書なしのリスク・収入未払いトラブルの防ぎ方・秘密保持契約・著作権の帰属まで、フリーランスを守る契約書の基礎知識をまとめます。
✓この記事でわかること
フリーランスの業務委託契約書の作り方と必須記載事項を解説。契約書なしのリスク・収入未払いトラブルの防ぎ方・秘密保持契約・著作権の帰属まで、フリーランスを守る契約書の基礎知識をまとめます。
フリーランスに契約書は必須
「口頭で仕事を引き受けたら、後で報酬を払ってもらえなかった」「作った成果物の著作権をめぐってトラブルになった」——フリーランスのトラブルの多くは、契約書を作っていなかったことが原因です。
契約書は「相手を信用していない証拠」ではなく、双方を守るための大切なビジネスツールです。特に個人対企業の取引では、企業側は法務部や弁護士のバックアップがある一方、フリーランス側は交渉で不利になりやすい。契約書が「お互いの約束を記録したもの」として機能することで、トラブル時の解決がスムーズになります。
契約書がない場合のリスク
リスク1:報酬未払い
契約書がないと「言った・言わない」の水掛け論になります。
- 金額・支払い条件について「そんな合意はしていない」と言い張られても反論できない
- 法的手段を取ろうとしても証拠が弱い
- 弁護士費用・裁判費用が発生し、追いかけるコストが回収額を上回ることも
実際のケース: 納品後に「想定と違う」と言われ、報酬を全額支払われなかった。契約書がなかったため交渉ができず、泣き寝入りになった。
リスク2:著作権・知的財産のトラブル
成果物の著作権は、契約で定めがない場合、制作者(フリーランス側)に帰属するのが法律上の原則です(著作権法)。しかし多くのクライアントは「お金を払ったから著作権も手に入る」と誤解しています。
この認識の違いが、後から大きなトラブルになるケースが後を絶ちません。
リスク3:業務範囲・追加作業のトラブル
「これもお願いします」と契約外の作業を次々に求められ、断りにくくなるケースがあります。
「どこまでが契約の範囲か」を文書化しておくことで、追加作業については「別途費用が発生します」と明確に伝えられます。
業務委託契約書に必須の記載事項
1. 業務の内容と範囲
契約書の中で最も重要な項目です。「何を・どこまで・どんな品質で」を具体的に書きます。
記載例(Webデザインの場合):
甲は乙に対し、以下の業務を委託する。
①〇〇株式会社Webサイトリニューアルに関するデザイン制作
②成果物:トップページ・下層ページ各5ページのデザインカンプ(Figmaファイル)
③修正は各ページ2回まで本契約に含む
④対応ブラウザ:Chrome・Safari・Edge(スマートフォン表示対応)
ポイント:
- 成果物を「ファイル形式」まで明記する
- 修正回数の上限を明記する
- 対応範囲・スコープをできるだけ細かく書く
2. 報酬額と支払い条件
金額だけでなく「税込みか税別か」「振込手数料は誰が負担するか」「いつ支払われるか」を明記します。
記載例:
業務委託料:金〇〇万円(税別)
支払い期日:成果物の検収完了から30日以内
支払い方法:銀行振込(振込手数料は甲の負担)
振込先:〇〇銀行〇〇支店 普通預金 口座番号〇〇〇〇〇〇〇
フリーランス新法(2024年11月施行)の変更点: 2024年11月から施行された「フリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス新法)」では、業務委託者(発注者)は「報酬の支払期日を納品日から60日以内に設定する義務」があります。60日以内の設定をされていない契約には修正を求める権利があります。
3. 納期・スケジュール
記載例:
乙は〇年〇月〇日までに成果物を甲に納品する。
ただし、甲から提供予定の素材(テキスト・写真)が〇月〇日までに受領できない場合、
納期は素材受領後から〇営業日以内とする。
ポイント: 自分の作業がクライアントからの素材・確認に依存する場合、その条件も明記しておくことが重要です。
4. 修正・変更の範囲
記載例:
本契約における修正は各成果物につき2回まで含む。
3回目以降の修正については、別途1修正あたり〇〇円(税別)にて対応する。
大幅な方向転換・仕様変更については、追加費用を協議の上決定する。
修正範囲を明確にしないと、無限に修正を求められる「修正地獄」になりかねません。
5. 著作権・知的財産権の帰属
著作権の扱いは2パターンあります。どちらにするかをクライアントと合意した上で明記します。
記載例A(制作者に帰属させる場合):
本業務で制作した成果物の著作権は乙(制作者)に帰属する。
甲は対価の支払い完了後、本成果物を事業目的での使用権を取得する。
記載例B(発注者に譲渡する場合):
本業務で制作した成果物の著作権・知的財産権は、
報酬の支払いをもって甲(発注者)に帰属する(著作者人格権は除く)。
多くのビジネス案件では「B(発注者に譲渡)」の形が求められます。ただし著作者人格権(氏名表示権・同一性保持権)は著作権法上、譲渡できないため除外します。
6. 秘密保持(NDA)
記載例:
乙は本業務遂行中に知り得た甲の業務情報・技術情報・顧客情報・
財務情報を第三者に開示せず、本業務以外の目的に使用しない。
本条の義務は契約終了後も3年間存続する。
7. 契約解除・途中終了の条件
記載例:
甲または乙は、相手方が本契約に違反した場合、
14日前の書面通知により本契約を解除できる。
甲の都合により中途解除する場合、既完了分の業務に対する報酬は支払う。
契約書の種類:基本契約と個別契約
継続的な取引の場合(基本契約+個別契約)
同じクライアントと複数の案件を継続して行う場合、「基本契約」で共通のルールを決め、案件ごとの詳細は「個別契約(発注書)」で補足する方法が効率的です。
基本契約に書くこと: 秘密保持・著作権・支払い方法・解除条件など、案件によって変わらないルール
個別契約(発注書)に書くこと: 業務内容・報酬額・納期など、案件ごとに異なる内容
単発案件の場合(1枚の業務委託契約書)
一度限りの仕事なら、基本契約と個別契約を1枚にまとめた「業務委託契約書」で対応できます。
契約書の作り方:3つの方法
方法1:政府の無料テンプレートを活用する
内閣官房・経済産業省が「フリーランスとしての安全な取引のためのモデル契約書」を公開しています。無料でダウンロードできるため、まずここから始めるのがおすすめです。
検索:「フリーランス モデル契約書 内閣官房」
方法2:弁護士・行政書士に依頼する
費用:数万円〜(内容による)
自分のビジネスに合わせた契約書を作ってもらえます。継続的にフリーランス活動をするなら、一度は専門家に依頼する価値があります。
方法3:電子契約サービスを活用する
クラウドサイン(cloudsign.jp)・DocuSign等の電子契約サービスを使うと、契約書のやり取りをオンラインで完結できます。
電子契約のメリット:
- 郵便・FAXが不要、メールでURLを送るだけ
- 署名・捺印もオンラインで完結
- 過去の契約書の検索・管理が容易
- 印紙税が不要(電子契約は課税対象外)
クラウドサインは月10件まで無料で使えるため、フリーランス初期のコストを抑えながら始められます。
フリーランス新法(2024年11月施行)で変わること
「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス新法)」により、業務委託者(発注者)に以下の義務が課せられました。
発注者の義務:
- 業務委託の内容・報酬額等を書面または電磁的方法で明示する
- 報酬の支払期日は納品後60日以内
- 一方的な報酬の減額・不当な返品・ハラスメント対応の整備
フリーランス側の権利:
- 書面交付がない場合は求める権利がある
- 不当な取引条件の改善を申し出ることができる
- 都道府県労働局への相談窓口が設けられている
まとめ
契約書は「相手を疑うもの」ではなく「お互いを守るもの」です。
今すぐできるアクション:
- 内閣官房の無料モデル契約書をダウンロードする
- 自分のビジネスに合わせてカスタマイズする(業務内容・料金・著作権の扱いを明記)
- 電子契約サービス(クラウドサイン)に登録する(無料で使い始められる)
- 次の案件から必ず契約書を交わす習慣をつける
最初は「面倒だな」と感じるかもしれませんが、一度テンプレートを作れば次からは10〜15分で完成します。契約書を習慣化することで、安心して仕事に集中できる環境が整います。
トラブルが起きてからでは遅い。今日から始めましょう。
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暮らしとお金のカフェ 編集部
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